ビートラック行政書士事務所 水谷です!
今回は遺言の撤回についてご説明いたします♪
書いては見たものの、「やっぱ辞めたい」「内容を変えたい」ということもあるでしょう。
果たしてできるのでしょうか。
📝こんな人におススメ
- 遺言書作成を検討されている方
- 遺言書を書いたけど撤回したい方
- エンディングノートとの違いを知りたい方
- 残された相続人にメッセージを残したい方
📌そもそも遺言て何??
🔖遺言とは何か
遺言とは「生前の最後の意思表示を認め、法律効果を死後発生させるもの」です💡
この「意思表示」とは、法律上非常に重要なものです。
「法律効果の発生を意図するもの」を意思表示と言います。
「明日は晴れてほしいなあ」では法律効果は発生しませんので、
法律上の意思表示とは言えません💡
🔖遺言は厳格!
遺言は非常に厳格です。
別にコピー用紙の裏でも、折り紙の裏でもいいんですが、
音声データや録画ではダメです。
誰かに「俺の財産は全て息子に相続させる」と伝えておいても無意味です。
法律で定められた要式に沿って書き進める必要があります。
これを「要式主義」といいます。
民法(一般私人間に適用される基本的な法律です)は、
「なるべく当事者の自由」がモットーなので、「不要式」が基本ですが、
遺言はその例外なのです💡
🔖なぜ厳格なのか?
端的に言うと、争いごとを防ぐためです。
そもそも遺言とは、争いごとを防ぐためのものです。
少々矛盾していますが、どういうことかと言いますと、
あいまいな意思表示は、かえって遺産争いの火種になるということです😥
例えば、
文字が全部パソコンで打たれていたらどう思いますか?
本当に故人が自分で打ったのでしょうか?
2枚出てきて、
一方には「2021年夏 全財産を長男太郎に相続させる」
他方には「2021年夏 全財産を次男次郎に相続させる」
と書いてあったら、どちらが最終の意思表示なのでしょうか。
せっかく、自分がなくなった後、遺産を巡って争ってほしくないから、
あらかじめ割り振っておこうと思ったのに、
かえって骨肉の争いを生みます😫
太古の昔から、相続の話合いは「荒れやすい」のです。
なるべく個人の財産はその人の自由にしたいとしても、
民法を作った人は「そうは言っても、さすがに遺言については自由はマズい」と思ったわけです。
そこで、民法に厳格な定めを置き、
手続きの乗っ取っていない遺言は無効にしたわけです。
コラム 手続き違反は無効
なぜ無効にしたのでしょうか。
それは、「中途半端な定めにして荒れるくらいなら、いっそ無効にしたほうがマシ」と考えたからです。
そもそも遺言は、原則からするとテクニカルな手法です。
生きているときに自分の意思を相手に伝える、というのがセオリーであるところ、
それではうまくいかない場面があるので、死後に効力を生じさせる仕組みを用意したわけです。
ですので、効力発生の段取りを決めておかないと、例外の例外の例外・・が次々生まれます。
そこで、例外的に遺言を認めるが、手続きに反していれば、
原則に戻す!
としたわけです。
この場合、法定相続分に従って財産が共有状態になり、
遺産分割協議をもって、個別財産に振り分けられます。
コラム 紛争が起こると困るのは誰?
紛争が起きると困るのは、当事者です。
誰でもそう思うでしょう。
間違いなく正解なのですが、実はもう一人います。
裁判所(裁判官)です。
裁判官は分刻みで業務を行っています。
簡易裁判所などでは、30分間でいくつもの訴訟を次々進めていると聞きます。
判決を見ていると時折、「こういう判断をしたら、また訴訟になるな・・。だからこうだな」
という思想が見え隠れします。
これは悪いことではありません。
法律の最も良い使い方は「予防法務」だからです。
紛争が起こってから、法律を駆使して戦うのではなく、
もめ事を未然に防ぐために使うのです。
司法改革により、弁護士を増やしましょうという取り組みがここ20年ほどの方針であり、
それとは矛盾するといえば矛盾しますが。。
ともあれ、訴訟が増えすぎると裁判所がパンクすることは間違いありません。
📌遺言書を作ると、財産は手を付けられなくなる??
遺言書を作成すると、財産の処分はできなくなるのでしょうか。
そんなことはありませんのでご安心ください💡
仮に、全財産を長男に相続させると遺言書に書いたとしても、
全財産をギャンブルに投資してなくしてしまっても問題ありません。
あくまで、ご自身の財産はあなた固有のものです。
遺言書を書いたからと言って不自由が生じるのはおかしいのです。
📌遺言の撤回は可能なのか?
🔖遺言の撤回は可能
遺言は撤回できます。
しかも、いつでも可能です(もちろん生前ですが)。
このルールをうまく活用しましょう。
一度書いたら絶対そのまま、ということであれば怖くてそんな制度使えませんよね。。
撤回できるからこそ、
数年に1度見直すなど、ご自身の真意を正確に反映できるのです♪
見直すタイミングを決めておいてもいいかもしれませんね!
📌遺言の撤回方法 基本知識
🔖遺言の撤回に関する条文
民法1022条は、遺言撤回自由を定めています。
理由がどうであれ撤回可能です。
遺言の撤回は遺言によって行うことができる、という意味です。
撤回は気が変わったなどの理由でも構いません。
なお、詐欺・脅迫によって撤回された場合は取り消すことができますので、
一度撤回した遺言がそのままの形で復活します。
🔖遺言撤回の方式
遺言にはいくつか種類があります💡
公正証書遺言という、公証人の立会いの下で行う遺言や、
自筆証書遺言という、ご本人自らが全文を自書して作成する遺言などです。
撤回の方式は異なっていてもかまいませんので、
公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することも可能です。
コラム 撤回のその他の方法
民法1022条には、撤回は遺言の方式に沿って行う必要があると書いてあります。
では、破り捨てた場合はどうなるのでしょうか。
この場合、撤回したものとみなされます💡
「みなす」というのはとても強い言葉で、原則反論を許しません。
簡単には覆らないのです。
ちなみに、反対概念として「推定」という言葉があります。
こちらは「反証がなければ、そういうことにする」という意味ですので、
反証の余地があります。
完全にご自身しか存在を知らないのであれば、破り捨ててしまえばOKですが、
「遺言書あるからね」と家族に伝えてある場合などは、
死後、ご家族が探しますので、こっそり破り捨てるのはやめた方がよいでしょう。
なお、公正証書遺言は公証役場に保管されるため、破り捨てるのは無理です。
例えば、本文全体に左上から右下にかけて赤色のボールペンで1本の斜線を引くとどうでしょう。
実はこれ、実際の争いになった事例です(判例です)。
結論、撤回に当たるとされました💡
故人の意思が、遺言を撤回する意思と読み取れるからです。
ですが、ちょっと危ない方法ですので、
遺言によらず撤回するのであれば、シュレッダーにかけるなりしたほうが良いと思います。
判例は、あくまで「その時代、その状況を全体的に考慮・鑑みて」の判断ですので、
変わることがあります❗
もちろん、過去の判断は1つの指針になりますが、
法律の条文と違って、絶対に守らないといけないものではありません。
例えば、中途半端に斜線が引かれているから、
撤回ではなくペンが触れてしまっただけだ=撤回ではない、
などと判断される可能性も0ではないのです。
遺言の厳格さの表れです💡
📌遺言による遺言の撤回方法 詳細
🔖新たな遺言書に撤回と記載する
遺言書で過去の遺言を撤回する方法は、
前の遺言を撤回する旨を記載した、新たな遺言書を作成すればOKです。
遺言書は日付が重要です。
その日付を見て、どれが最新の意思表示か判断します。
🔖一部みなし撤回
こちらは、みなし規定を利用した撤回方法です。
前の遺言と抵触する内容の場合、後の遺言が正となるというルールがあります。
例えば、前の遺言で、
A県A市1-1-1の土地は長男に相続させる
B県B市2-2-2の土地は次男に相続させる
と記載がある場合に、最新の遺言書で
A県A市1-1-1の土地は妻に相続させる
と記載があれば、
撤回されるのは、「A県A市1-1-1の土地は長男に相続させる」の部分だけであり、
B県B市2-2-2の土地は次男が相続できます。
🔖内容の修正
遺言書の書き間違いなどの修正も可能です。
その方法も法定されており、
単に二重線を引っ張るだけでは足りません。
何文字どこをどのように訂正したか記載して押印まで必要です。
非常に難しいので、修正が生じたら書き直したほうが無難です。
🔖遺言内容に抵触する生前行為
少しテクニカルな話ですが、
遺言書に「A県A市1-1-1の土地は長男に相続させる」と書いた後、
当該土地を売り払ってしまった場合、どうなるのでしょうか。
この場合、「A県A市1-1-1の土地は長男に相続させる」旨の遺言は撤回とみなされます💡
前述の通り、遺言書を書いたからと言って、
財産処分ができなくなるわけではありません。
処分は有効ですので、土地を買った人も、
相続人から遺言書があるから返せ!と言われる筋合いはありません。
📌遺言書撤回の実務
これまで撤回方法を具体例を挙げながらご説明してきましたが、
実務の取り扱いは、
「全部書き直し」です‼
一部の撤回であろうと、全て作り直しが基本です。
一部撤回やみなし撤回は、ルールとしては確立されているものの、
わかりにくいんです。
解釈の余地を残すと、もめごとが起こります。
コラムで記載した通り、
法律のベストな使い道は戦争ではなく予防なので、
少し面倒ですが、一から作り直して、
前の遺言書のすべてを無効にするのが実務の取り扱いです。
遺言書は作成ルールも厳格です!
書き方を間違えると、全部が無効になることもあるので、
書き直しの場合も、専門家監修のもと行うのが良いでしょう。
📌意思を残すということ
🔖遺言の内容
故人の最後の意思を残す方法は、
遺言書に限られたものではありません。
あくまで、権利義務(≒財産)の配分は遺言で行いますが、
家族で仲良く暮らしてほしいなどのメッセージもとても重要です。
むしろ、法的効果はさておき、そのような温かいメッセージのほうが重要かもしれません。
遺言書にはそのようなメッセージを残すことも可能です。
むしろ、可能であれば記載することをお勧めしています。
自分の亡き後、関係者一同仲良くしてもらうことが、一番の願いではないでしょうか。
🔖遺言以外のメッセージ
昨今、エンディングノートが流行っています。
これは、法的な財産の帰属云々の話ではなく、
関係者に宛てた「お手紙」です。
ラフに書くことができるので、気持ちが伝わりやすいのが特徴です。
遺言を書くほどではないけど、思いを伝えたいなあという方におススメです。
あまりイメージが良くない言葉かもしれませんが、
似た言葉に「遺書」があります。
ですが、遺書と遺言書は全く別物です。
遺書もメッセージには違いありませんが、
通常、あまり前向きな内容ではありません。
このイメージに引っ張られる形で、遺言をためらう方も一定数いらっしゃいます。
ですが、当ブログでご説明してきた通り、
遺言は前向きな書面です💡
その意味では、エンディングノートに近い立ち位置です💡
趣旨をよく理解して、有効活用しましょう。
行政書士は専門家として遺言書作成のお手伝いが可能です。
弊所は相続関連業務を得意とし、
遺言は元より、エンディングノート作成の指南も行っております。
迷われている方、ご不安を抱えている方は、ぜひご相談くださいませ。