契約とは
皆さんも日常生活の中で様々な契約を結んだことがあると思います。
では、法律上の契約とはどのようなものなのでしょうか。
契約とは ~定義~
まず定義から見ていきましょう。
契約は「対立する2つ以上の意思表示の合致により成立する法律行為」と定義づけることができます。
(組合契約のように必ずしも対立しない場合もあります)
売買契約などは、「買います」「売ります」という対立する意思表示があります。
お互いが、「その値段で買います」「この値段で売ります」などと合意(申込みと承諾の合致)できれば、契約成立です。
法律上、特約がなければ、この時点で物の所有権が移ります
契約とは ~自由であるべき~
民法の基本的な思想は、契約は私人の自由に締結されるべき、という点にあります。
皆さんもコンビニでパンを買うのに、いちいち国が「許可する!」などと言ってきたら煩わしいですし、
自分の金をどう使おうと勝手だろ!と思いますよね。
これは、国以外の関係でも同じです。
皆さんがパンを買うのに、家族の許可も、隣の家のおじさんの許可も要りません。
(未成年者、成年後見人など一部修正があります)
これを難しい言葉で言うと「契約自由の原則」と言います。
契約とは ~契約書は必須?~
民法の原則は非様式です。つまり、意思表示だけで法律効果は発生するのが原則です。
(なお、昨今の情勢を受け法改正があり、保証契約など一部の重要な法律行為については書面・電磁的記録が成立要件になります。)
では、なぜ「契約書」をわざわざ用意するのでしょうか。
それは契約内容を明文化することで後日の紛争を防ぐためです。
話を少し民事訴訟に移します。
ドラマなどでも、よく「裁判するぞ!」などと聞くことがあると思います。
この点、実務上は「訴訟を行う」、「訴えを提起する」などと言います。
「裁判」とは司法機関である裁判所または裁判官が具体的事件において行う公権的な判断を指すので、意味合いが広くなります。
さて、訴訟の仕組みはどのようにイメージされるでしょうか。
多くは相手を打ち負かす、相手に自分の主張を認めさせる、と思われると思います。
(※刑事裁判の場合はここではおいておきます)
実は、訴訟とは「裁判所・裁判官を納得させる作業」なのです。
右左に原告被告席があり、真ん中に裁判官がいますよね。
あれは、原告が被告に、または被告が原告に話しているようでいて、
実際は中立の立場の裁判官に「こういう主張をします。証拠はこれです」と、理解を求めているのです。
裁判官を納得させた方が勝ちなのですが、さて、裁判官の目線からするとどうでしょうか。
直前まで見たことも聞いたこともない人たちが、お互い自分が正しいと言い争うわけです。何を基に判断すればよいのでしょうか。
そうです。「証拠」ですね。
証拠(証拠調べの方法)には5つあります。
書証(文書に対する証拠調べ)、検証(裁判官の五感に訴える証拠調べ)、証人尋問(証人の証言を証拠とする証拠調べ)、当事者尋問(原告被告自身の証言を証拠とする証拠調べ)、鑑定(専門家の学識経験を証拠とする証拠調べ)です。
一般的に書証は証拠力が高いと言われています。(人は噓をつくが書面は嘘をつかない、といったところでしょうか・・)。
契約書はこの中で「書証」に当たります。
「そんな契約は締結していないので、売買契約は無効だ!」という主張に対し、「代表取締役の押印付きの契約書があるぞ!」と反論があれば、
裁判官はどちらが正しいと思うでしょうか。
自由心象主義と言って「裁判官の良心に従い、その自由な心象によって判決を出してよい」という原則がありますので、
必ずしも契約成立との判断が下るとも限りませんが、通常は「売買契約はあったんだな」と思うでしょう。
日本の裁判はアメリカなどに比べ、一般的には長いと言われています。
また費用の問題もあります。弁護士や認定司法書士に代理をする費用もそうですし、
北海道の方と沖縄の方が争う場合、管轄を沖縄にされてしまうと、北海道の人は原則出廷しないと負けてしまうので、1期日ウン万円の費用が掛かります。
内容が盛り込まれた契約書が双方にあれば、言った言わないの問題も防ぎやすいですし、
そもそも訴えたところで負け筋が見えてくるので、無茶な訴訟は起こさないでしょう。
このように、「争いが起きなければ問題ないが、起きたら困るので、起こらないようにまた、起きた際も不利にならないように」契約書を締結するのです。
法律家の腕の見せ所は2つあります。
一つは訴訟になった際の勝敗を分ける実力、もう一つは「予防法務」です。
弁護士、認定司法書士等の訴訟の専門家は、特に契約書の構成や文言にこだわりますが、そのように先をにらんでいるからなんですね。
契約とは ~契約書に印紙は必要なのか?~
契約書に印紙が貼られているのをご覧になった方は多いと思います。
これは何なのでしょうか。
先ほど、契約自由の原則があるので、国にとやかく言われる筋合いはない、と申し上げたばかりなのに、税金払うのか?という話です。
実は、印紙税法に定められており、払わなければならない、というのが答えになります・・。
ただし、あらゆる契約書に必要なわけではありません。
不動産の売買契約書(マンションなどを購入したことがある方は、デベロッパーと折半で払ったご記憶があるかもしれません)や請負契約書など定められた一定の契約書になります。
さて、最近ではコロナ禍ということもあり、電磁的記録(つまりPDFとかです)で契約を締結することが増えてきました。
その場合、どうやって印紙を貼るのでしょうか。
答えは印紙(税)不要です。
政府見解としては「印紙税法の対象は「文書」であるところ、電磁的記録は「文書」ではないから」ということらしいですが、
それでいいならいいですが・・という感じですね・・。
通常、「書面もしくは電磁的記録」というように条文上も一緒くたにされることが多い(法改正の際にそのように整備されました)ので、
ちょっと珍しい判断かなと思います。
いつの日か課税対象になるかもしれません・・。財政難ですので・・。
最後に
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