無効と取消し

民法

当ブログでは無効と取消しについてご説明しようと思います。

両者の違いはなんなのでしょうか。

無効と取消しとは

日本語の意味としても何となく分かるかもしれませんが、

法律上、両者は明確に異なります。

が、似ています。兄弟みたいなものでしょうか。

法律というのは、必ず意味があって存在します。

そして”似ているけど少し違う”というのが法律上は大きな意味合いを持ちます。

無効とは、

法律行為の効果が初めから何も生じません。

取消しとは、

取り消されるまでは有効だが、取り消されたからには初めから法律行為の効果が生じないことを言います。

取り消された後は、ほとんど無効と同じになります。

追認

追認という法律行為が、両者の違いをより明確にします。

追認とはその名の通り、追って認めることです。

わかりがよいので、取消しから説明します。

取り消しできる法律行為を追認すると、確定的に有効になり、取消しの余地がなくなります。

取り消しできる行為は、取消しと追認の早い者勝ちです。

どちらかを行うと、他方を行う余地はなくなります。

無効な法律行為を追認するとどうでしょうか。

民法119条です。

無効な行為は追認によってもその効力を生じません。

ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認したときは、新たな行為をしたものとみなします。

無効は”初めから何も生じていない”ので、追認も何も、認めるものが初めから存在しないのです。

ですが、無効な法律行為には、意思表示にちょっとした瑕疵があるため法律上無効とされているだけで、

瑕疵の治癒が可能な場合もあります。

その場合、追認した時から仕切り直して、有効な法律行為とすることを認めたのです。

なお、”みなす”とは”そういうことにする”という意味なので、法律上は”推定”の対立概念となります。

“推定する”と書いて有れば、”反証を挙げれば覆る”ということになります。

※なお、当事者間においては、初めから有効とみなすことも可能です。

無効事由と取消し事由

民法上の無効事由は

強行規定違反、公序良俗違反、通謀虚偽表示、心裡留保、意思無能力者の行為です。

イメージは、

・強行規定違反=法律上、当事者が良いといっても無効な行為

・公序良俗違反=公の秩序や善良な風俗に反する行為

・通謀虚偽表示=当事者で嘘を作り上げる行為

・心裡留保=自ら嘘と分かって行う行為

・意思無能力者の行為=自己のなした法律行為の結果を判断する精神能力がない者の行為(幼児、酩酊者など)

です。

前者2つは、本人が良いといっても(追認)、瑕疵が治癒しません。

例えば、殺人契約は公序良俗違反です。無効です。

当事者が無効だけど有効にしよう!といっても有効になりません。

約束をして人を殺してしまう人もいますが、有効にならないということは、

訴訟で訴えても無駄ということです。

「Aの勝訴。BはCを殺害せよ」という判決は間違っても出ません。

民法上の取消し事由は、

錯誤、詐欺、強迫、制限行為能力者です。

イメージは、

錯誤=勘違い

詐欺=騙された

強迫=意思に反して無理やり行わされた

制限行為能力者=未成年、成年被後見人、被保佐人、被補助人

です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

このように、効果は同じ(もしくは似ている)だが異なる法律行為は多々存在します。

この微妙な差が大きい点が法律の難しい点です。

ですが、法律には”背景”と”思想”があります。

偉い人が、常識を加味せず、適当に拵えたものではありません。

“意味”を考えると面白くなってきます。

弊所では、法律の趣旨を重視し、適切な法務をご提供しております。

お困りの際は、ご相談ください。

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