ビートラック行政書士事務所 水谷です!
今回は相続が生じた場合の居住権についてご説明していきます♪
配偶者居住権という新制度が定められました!
📝こんな人におススメ
- 相続が生じており、居住の権利について知りたい方
- 配偶者居住権という新制度の概要を知りたい方
- 存命中に、配偶者に居住権を残しておきたい方
📌配偶者の居住に関する権利
平成30年に、配偶者の居住に関する新制度が定められました。
2種類ありますが、いずれも「法定」の権利です👀
法定ですので、合意なく、「要件を満たせば」自動的に発生するのが特徴です。
一つ目は、配偶者居住権
二つ目は、配偶者短期居住権
といいます✒
🔖配偶者居住権の定義
配偶者居住権の定義は
「配偶者が被相続人(お亡くなりになられた夫または妻)の財産である建物に、
相続開始時点において居住していた場合に、
建物全部を原則、終身の間(亡くなるまでの間)、無償で使用できる権利」
と言えるでしょう👆
シンプルな例でいえば、
一緒に暮らしていた夫が亡くなった場合、
その妻は引き続きその家に住んでよい、という権利です。
あたり前な気がしますよね❔
ですが、法律上、当たり前とも言えないんです👀
相続とは何か?という話にもなりますが、
相続とは包括承継といって、被相続人の財産の一切合切を、相続人が取得することをいいます。
ですが、奥さん、子ども、親など、必ずしも相続人は一人とは限りません。
複数当事者の関係を調整するために、「相続分」という概念があります💡
配偶者は当然に相続分を取得します。
じゃあ、建物を取得できるじゃないか!と思われたことでしょう。
その通りです💡
ですが、相続分は、妻1/2 子1/2など割合を定めただけなので、
具体的に、自動車は子、預金の2/3は妻、建物は・・など、遺産分けが必要になります。
これを遺産分割協議といいます👆
では、
夫「俺が死んだあと、建物は長男に相続させたいが、妻が住む場所がなくなるのは困るな・・」
と思ったらどうでしょう。
(一般的には、長男はお母さんを住まわせてあげるかもしれませんが、
一応権利なので、「出て行ってください」と言われたら立場が弱いです。
扶養の義務はありますが、出てってくれと言われている状況です。
相当もめていて、合意まで面倒臭いことでしょう。。)
いくつか手段は考えられますが、
法律はこのような場合に備えて、「法定」で妻(または夫)に、
居住地を確保する権利を定めたわけです👆
🔖配偶者短期居住権の定義
「短期」という文字が入っています。
定義を見ていきましょう。
配偶者短期居住権の定義は
「配偶者が被相続人の財産に属した建物に、相続開始時点で無償で居住していた場合、
最低6か月無償で使用できる権利」と言えます👆
配偶者居住権は、「全部永年無料」でしたが、
配偶者短期居住権は、(一部のみ無償で使っていたなら)「一部6か月無料」です。
だいぶ弱くなりました。。
コラム 負担が大きい制度
配偶者居住権は、建物所有者が負う負担が大きい制度です😥
本来自分が相続した財産を人のために使わなければならない謂れはないのですが、
なんせその内容が「法定」なので、逆らえません。。
夫(または妻)を亡くし、残された配偶者の生活保障のためなので仕方がありませんし、
守ってしかるべきなのでしょうが。
個人的には制度自体は良いと思っています💡
お年寄りや、経済的弱者は、一定程度サポートしてあげないと、
殺伐とした、単に強いものだけが生き残る(北斗の拳みたいな。。)世界になってしまいます😥
ですので、やるべきことは、
「制度の趣旨や内容を正しく理解して、取るべき行動を選択する」ことだと思います💡
📌配偶者居住権の取得方法(要件)
配偶者居住権の取得方法は以下です。
・遺産分割協議により、配偶者居住権を取得するものとされたこと
・配偶者居住権を遺贈してもらうこと(遺言書に書いてもらうということです)
・請求を受けた家庭裁判所が決定する
※共同相続人間で合意が成立している場合
※配偶者が取得希望の旨を申し出た場合で、
配偶者居住権が成立した場合の所有者の負担と、配偶者の受ける利益を比較衡量し、
それでも配偶者居住権を認めるべきと判断された場合
基本的には皆さんの話し合いもしくは、お亡くなりになられた方の最後の意思で決定されますが、
裁判所のお出ましとなるケースもあります💡
コラム 配偶者に遺産分けしたらよいのでは?
配偶者居住権などという権利を使わずに、
遺産分割協議で、直接配偶者の物にしてしまえばよいのでは?という考えもあるでしょう💡
正しい考え方なのですが、
所有権(その物が自分のものであるという権利)は評価額が高いのです。
評価額が高いということは、その他の預貯金などの相続に影響が及ぶということです。
その点配偶者居住権は評価額が低いのでお得なんです💰
📌配偶者短期居住権の取得方法(要件)
配偶者居住権と異なり、一定の状態の方は自動的に取得します。
それが以下です。(ほとんど先の「定義」と同じ内容です)
・配偶者であること(戸籍上の法律上の配偶者である必要があります。内縁などは含みません)
・被相続人の所有建物に、相続開始時に無償で居住していたこと
前述のとおり、6か月という期間限定です👆
これは、すぐに出て行けと言われても、次の住まいをすぐに見つけることはできないでしょうから
一定の猶予期間(家探しの期間)を与える趣旨です💡
立ち退き前提の制度です。
📌成立しない場合などの例外規定
両規定には例外の定めがあります👀
🔖配偶者居住権について
期間に関する別段の定め
特に定めがなければ永年(終の棲家)ですが、特別に定めることで、
期間を設定できます。
建物が共有の場合
被相続人(お亡くなりになられた配偶者)が、
相続開始時(お亡くなりになられた時)に、
該当の建物を残された配偶者以外の人と共同所有していた場合は、
配偶者居住権は成立しません。
前述の通り、配偶者居住権は、所有者にとっては負担が大きいのです🤔
原則永年で無償でしたよね(賃料がもらえるわけではない)。
大抵、親密な関係にある、利害関係が共通である、などの事情があって、共有しているところ、
今まであったこともないような人と共有することになり、
しかも、住み始めるわけです。永年。
立法者は、さすがに負担がでかすぎる、と考え、不成立としました。
配偶者居住権の消滅
配偶者居住権は消滅することがあります。
いくら永年無料で住んでも良いとしても、
そこはやはり人の物です。
大事にして然るべきですよね💡
そこで、善良な管理者の注意義務(自分のもの以上に大切に扱え)に違反した場合、
是正の催告をすることができます。
相当期間内に是正されない場合は配偶者居住権は消滅します。
なお、勝手に人に貸すことはできません(自分の終の棲家なので)し、
増改築もダメです(改造していい権利ではなく、住んでいい権利です)。
それらに違反した場合も、是正勧告の対象です。
🔖配偶者短期居住権について
欠格者の場合
民法には欠格者という立場の人が定められています。
まあ、あまり良い人ではありません。
具体的には、被相続人を殺意を持って殺した人、殺そうとした人などです。
そんな人に被相続人の建物を使わせる必要はありません。
即刻出て行ってもらいましょう🙅
非排除者の場合
こちらもあまり良い人ではありません。
被相続人に対してひどいことをした人です。
家庭裁判所に申し立てたり、遺言に記載して、
推定相続人(放っておいたら相続人になる人)を相続から除外します。
除外されているので、こちらも建物を使わせる必要がありません。
即刻出て行ってもらいましょう🙅
相続放棄をした場合は、配偶者短期居住権を取得できます。
相続放棄は、ひどいことをした人ではありません。
保護の必要性は通常と変わらないわけです。
配偶者居住権を取得した場合
より強い権利である配偶者居住権を取得したのであれば、
わざわざ弱い権利は不要です。
配偶者居住権は、永年無料の終の棲家です。
📌まとめ
いかがでしたでしょうか。
配偶者居住権も配偶者短期居住権も相続と密接な関係があります。
他の制度と合わせて上手に活用したいものです。